●2014年11月17日(月)
バイク修理ネタです〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜@ 今回もスクーターなんだけど、ちょっと新しい目のヤツ。 ヤマハの4サイクル50cc・水冷3バルブのシリーズですよん。 入庫してきた時の症状は、「エンジンが吹けない、スピードが20〜30km/h位までしか出ない」とのコト。 症状確認もしっかりと出来ました。吹けませんねぇ。
まずチェックするのは、プラグとエアクリーナーです。 プラグが消耗しているとこのような状態になるコトが考えられますし、悪名高い排気ガス規制対応の為に希薄燃焼させてますのでプラグの消耗は意外と早かったりします。 またエアクリーナーは吹き返しとかでブローバイガスが多量に発生して、エレメントが激しく汚れ目詰まりしているコトも考えられます。 オイルの入れ過ぎでもこんな状態になりますねぇ。 エレメントはぐちゃぐちゃでした。エアクリーナーボックス内もぐっちゃぐちゃに汚れてます。 でも何かその汚物が妙なんですねぇ。 汚物はオイルなんだけど「生キャラメル」とか「カプチーノ」状態なんです。 ・・・オイルキャップを開けて中をチェックすると、あらあらあら。何と言うコトでしょう〜@ 中から、クリーム?マヨネーズ?状になったオイルが溢れ出てくるではありませんか。 念の為、ラジエターキャップも開け中を見ると、こちらも同様です。 これは、水漏れですねぇ。
何処からか冷却水が漏れて、クランクケース内に侵入してしまったと。 オイルと冷却水が攪拌されてマヨネーズ状になり、その抵抗によりエンジン回転が伸びない。 しかも潤滑性能は大幅に低下しており、エンジン内各部分にもしかしたら重大なダメージがあるかも知れません。 ここで問題なのは、果たして何処から冷却水が漏れ出したのかの特定です。 考えられる箇所は、シリンダーヘッド/シリンダーの合わせ面。 ようするにヘッドガスケット抜けってのですねぇ。 そう言えば初代ぶいぶい軽トラの昭和キャリィもコレで逝かれてしまいました。 実はこのエンジンは一度開けて整備したのです。 つまり組んだのは私自身。 なので・・・・ここは自信たっぷりに「無い」と言えます。 その位しっかり確認して組まないとやって行けませんからねぇ。 もっとも運が悪く、ヘッドとかシリンダーの鋳物にスが入ってたりすれば別ですが。
もう一箇所考えられるのは、ウォーターポンプのシャフト部分。 ここにシールがあるんだけど、ヤマハのはオーソドックスなブ厚いゴムシールなのです。 もう少し上級クラスになるとメカニカル的なシールなんですけどねぇ。 ちなみにホンダの水冷50ccは良く考えられてて、完全密閉してて回転力は磁石でやっているのです。 シャフトが貫通していないのでシールに特別なモノが必要ありません。 もっとも、磁石駆動ってのはちゃんとポンプが回ってくれるのかと不安要素が別にあるんですけど。 どちらのメーカーも、ウォーターポンプはカムシャフト部分から駆動しています。
それ以外に、冷却水とエンジンオイルが接近してる部分はありません。 鋳物のクラックが原因だと仮定すると、この激しいマヨネーズっ振りは納得できませんねぇ。 相当リーク部分は大きくないと、クランクケースと冷却サイクル内が全滅ってコトにはならないはずです。 消去法で、ウォーターポンプが第一に怪しいと見当を付けました。 もっともクランクケース内も洗浄しなければならないので、エンジン腰上は少なくとも開けなくてはなりませんからヘッドガスケット部分もついでに点検するのです。
と、この段階でまず仮見積もり。 水冷の冷却サイクル部分ってのは、部品のお値段が結構するんです。 おミズの世界ってのは厳しいんですよねぇ。 ・・・ウォーターポンプのアッセンブリだと、\16,524-もします。 なんか自動車並みですねぇ。 ちなみに中の部品単品で修理すると、\7,000-位でなんとかなります。 組み立てコストが沢山掛かっているんでしょうか。 なので、ウォーターポンプ部分だけ取り外して分解してチェックするコトになりました。 意外とここは簡単に作業出来たりします。(エンジンを降ろさずに作業が出来ます) すると、故障原因が判明。しかも一目瞭然です。 タイトル写真の通り、ポンプのインペラーシャフト部分が錆びて酷く荒れてます。 これがポンプシールを壊してしまったんですねぇ。 ちなみにベアリングも錆が生じてます。 やっぱり最初の見立て通りでした。 これは結構な高額修理を覚悟していただかなくてはなりません。 ウォーターポンプ以外の、エンジン本体へのダメージは未チェックではありますがメカノイズでは嫌な雰囲気は感じませんでした。 なので一旦概算で修理スタート金額を算出し、エンジン本体部分の不具合が見つかった場合の追加予算分も合わせて計算しておきます。 オーナーさんに見積もりのご検討をお願いしたら、やっぱり「ちょっと考えさせて」とのコト。 金額がでかいんでじっくり検討したいんでしょうな。
イヤらしいコトに、高額な修理金額ではあるんだけど所詮原チャリクラス。 他のに買い換えるまでの金額では無いんです。 買うよりも安いけれど、この際だからちょっと無理して買い替えをするってのもアリ。 悩みますよねぇ。 結局、修理をするコトに相成りました。 ちなみに本当ならばウォーターポンプAssyで交換したいんだけど、工賃そのままで内部部品単品にてOHする作戦にしました。 これは一種のオマケですねぇ。費用が1万円ほど安くなるんです。
作業のほとんどは、洗浄に費やしました。 クランクケース内部も冷却サイクル内部も悲惨な状況でしたからねぇ。 ちなみに心配していたエンジン本体の状況でしたが、ダメージは僅少の様子。 多分、不調になってからすぐに持って来たのが功を奏したようです。 無理して乗り続けていたらもっと致命的な状態になっていたはずですからねぇ。
故障の原因を考えると、やはり自然故障でしょうな。 以前エンジンを分解整備しておりますが、ウォーターポンプは丸ごと取り外すだけなので内部を見ておりません。 つまりシャフト部が錆びて腐食してても判らなかったのです。 と言う事は、つまり他のバイクでも同じ造りになってるから、同様のトラブルが発生する可能性があるってコトです。 今回のスクーターは6〜7年経過してんですけど、今後も同様の修理が入ってくるんでしょうかねぇ。 正直言って、ちょっと大変だなーと思います。 特に見積もりをしてお返事を頂くのが一番の修羅場だったり。 4サイクルにしても、水冷にしても、インジェクションにしても、システムが複雑かつ高度になればトラブった時の修理代もまた高くなって行きますねぇ。 でも各々の常識って言うか、金額の感覚ってのは、なかなかそうスパッと切り替えて割り切れるモノではありません。 昔の原チャリみたいに、シンプルな構造で壊れにくく、壊れても修理しやすいってのは「良かったなー」と懐かしむ時代はすぐそこまで来ているのでしょうか。 もっともビンテージとか骨董品みたいな機械のメンテも、多大なコストと苦労が付き物だったりするんですが。
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