●2012年11月22日(木)
バイクネタで続きます〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜@ エンジン修理と言うと、とうしても大掛かりになりますね。 費用も大変掛かりますのであんまりなじみが無いとは思いますが・・・ 基本的には、車体やエンジンがイカれたら、そのバイクの寿命と考えて結構です。 どうしてもと言う特別な事情が無い限りは、修理してまで使いませんからねぇ。 でも、その特別な事情とやらが絡んだ修理車が私の所に入ってくるのでしたv
今回は、同じ車種のエンジン2台を一緒に修理しています。 たまたま集まってしまったんだけれど、偶然とは恐ろしい物です。 ホンダ・ズーマー系の、水冷4サイクルSOHC2バルブです。 実はこの系統のエンジンに関してはヤッたコトがないので、初挑戦です。 バイク全体で見れば、ただの原付き50ccです。 従来の原チャリとの違いなんてのは、そんなに感じられません。 と言うのも、水冷エンジンなんだけれど冷却系部品はエンジン側へコンパクトに納まってて、ラジエターへの配管とかは車体側にはないからです。 それだけに、高度なメカニズムがぎっしり凝縮されてる造りになってるので、ちょっと分解整備には手こずりそうですな。 症状は、エンジンを回すと異音が生じるとのコト。 ちなみに2台ありますが、音の感じが随分違います。 一台はガチャガチャと盛大なメカノイズがEg右側から出ています。 もう一台は、ミ゛ーミ゛ーと言うような変な音が何処からか出ているのです。 ちなみに、この系統のエンジンは、走行距離が1万キロを超えるとクランクベアリングが壊れる事例があるようです。 確かホンダのスクーターは、以前の2サイクルDioZX(AF35)に関しても同様のクランクベアリング故障が多発してましたねぇ。 私が今まで最も数多く修理したスクーターエンジンは、ライブディオ系ですから。 今回の故障はどちらも、クランクベアリング不良が疑わしいです。 調べて見ると、ライブディオ時代のベアリングとほぼ同じモノが使われているそうな。 確かに4サイクルエンジンならオイルが廻っているので、2サイクルよりも潤滑では有利ではあります。 しかし、カブ系のエンジンはもっと大きなベアリングが使われてて、実績もあるのに。 あんまりホンダには、反省って文字が見られない様子ですな。 とにかく、修理の際最初にあんまり不良箇所を決め付けるのは良くないのですが、クランク周辺程度に見当を付けてバラしにかかります。
エンジン修理の大変な所は、目的の部品に到達するまでにイロイロやんなきゃならない点です。 まずエンジンオイルを抜き、冷却水も抜いておきます。 スクーターなので外装等を取り外ししなきゃなりませんねぇ。 それから、簡単に言うとエンジンに繋がっているケーブルや配線・配管類を全部外します。 そして車体からエンジンを切り離すんです。 エンジン単体になったら、補機類を外してってクランクケース分解が出来るようにします。 クランクケースを分解し、カムチェーン周りも取り外しをしてクランクシャフトを取り出すんです。 その時に、クランクベアリングのホルダ部分とかの荒れ具合や、ケース内部の汚れの状態を観察して故障原因の見当をつけます。 大雑把にでも、どのような故障へのプロセスがあったのかを考えなければ、修理できませんからねぇ。 文章で簡単に書いてるけれど、実際の作業は結構大変なのです。 やっぱり配線・配管類が多くて複雑ですねぇ。
で、取り出したクランクシャフトを観察してみました。 2台あるのですけど、一台の「ガチャガチャ音」の方は明らかにクランクベアリングの片側がガタガタです。 クランクケース側のホルダ部分は損傷していない様子ですねぇ。 でも問題なのは、ベアリングがプーリー側ではなくてACG側の方が不良なのです。 ACG側にはカムギヤ&オイルポンプギヤがありますのでそちらのベアリング交換は困難ですし、ホンダの補修部品供給ではクランクシャフトA'ssy交換となってます。 プーリー側ならベアリング単体で供給されてんですけどねぇ。 〜参考〜 HONDA品番:[13000-GET-000] 13000-GET-010 クランクシャフトCOMP. 定価¥13,125- HONDA品番:[91006-GEE-003] 91006-GEE-013 ベアリング.ラジアルボール 定価¥2,237-
で、故障事例では大抵がプーリー側のベアリングが壊れる事が多いみたいなのです。 やはりベルト駆動の場合だと、一方向へ引っ張る力が加わるので軸受けにはキツイようですねぇ。 それに重量物であるクランクウェブやフライホイールから遠い方の軸受けにはより大きく負担が加わるのかも。 今回は残念ながらACG側ベアリング不良なので、クランクA'ssyで交換する必要があるのです。 しかし、よくよく眺めてみるとあることに気が付きました。 ACG側のベアリングも、プーリー側と同じモノが使われています。 唯一異なる点は、プーリー側は片側シールなんだけれど、ACG側のはシールなし開放型なんですねぇ。 もっとも、シール付きのベアリングもシールを取り外してしまえば開放型になりますけど。 なので、タイミングギヤ部の圧入勘合をやっつければクランクシャフトを交換しなくても済みそうです。 内燃機屋さんのお世話にならなければいけませんけどね。
でも・・・試しにプーラーで引っ張ってみました。 プーラーの爪は結構しっかりと掛かりますから、あとはCRC5-56とトーチの助けを借りてやっつけてみます。 すると、美味い具合に抜けてきましたよんv ちなみにこのタイミングギヤには合わせ位置が決まってます。 そうじゃなきゃ、カムシャフトとの位相が決まりませんからねぇ。 写真上の一番左のが、その合わせ位置となります。 クランク内側の小さいギヤがカムスプロケットギヤでして、外側はオイルポンプギヤなのです。 どちらのギヤも山同士で一致する所と、クランクシャフトのキー溝の位置で合わせてますねぇ。 ちなみにカブ系のクランクシャフトだと、カムスプロケットギヤの谷とクランクシャフトキー溝とを合わせるんです。 (写真下の一番左) この合わせ位置ってのが結構見落とされますので注意です。 サービスマニュアルにも載っていないし、現物にも「合わせマーク」なんて親切なモノはありません。 もう1台のエンジンは、何とオイルポンプギヤのシャフトが折れてました。 このギヤはエンジニアリングプラスチック製でして、エンジン掛かってる間は折れたシャフトをこすりながら回してたようです。 ミ゛ーミ゛ー言うのは、この擦れ音だったんですねぇ。 潤滑が弱い状態で動いてたので、エンジン各部の磨耗状況とかを細かくチェックしなければなりません。 ちなみに、どちらも走行距離が多いのでクランクベアリングのガタは不良品以外でも多少出ています。 なのでオーバーホールという事で、結局4個全部を新品に交換することにしました。 クランクシャフトA'ssyで換えなくても良くなったので、費用的な制約が緩くなったんです。 もう一台のクランクシャフトも、プーラーとCRC5-56,トーチの組み合わせで圧入タイミングギヤをやっつけ抜き取ります。
クランクベアリングの交換をするには、ベアリングだけではなくガスケット関連が必要です。 とは言ってもさすがに新しい設計のエンジンですので、オイルシールとOリングパッキンを使ってるだけなんですねぇ。 ガスケットは、ヘッドガスケットとカムチェーンテンショナーのガスケットだけだったりします。 もっとも、水冷エンジンなので「おミズの通り道」のOリングパッキンも全て交換しておきました。 やっぱりおミズ漏れは困りますからねぇ。 さらに欲張って、ヘッド周辺もメンテナンスするコトにしました。 現状で作動しているからそのままでも構わないんですが、やっぱり4サイクルエンジンの要はシリンダヘッドですからねぇ。 燃焼室やポートのお掃除とバルブ擦り合せ、それとバルブステムシール交換をしたいんです。 折角分解したんだから、やっておくに越した事はありません。 追加の部品代っても対した額にはなりませんからねぇ。 ピストンやシリンダーに関しては、磨耗はごく僅かです。 特にピストンはフリクションロス低減設計が徹底的に行われているようでして、側面の擦れがとても少ないんです。 やっぱり新しい設計のエンジンはいいわぁ♪と喜んでしまいました。 ただ問題なのは、エンジン部品のあらゆる物がコンパクトで、小さすぎるんです。 なので作業にはてこずりました。 バルブスプリングコンプレッサもそのままではサイズがガバガバで使えず、スペーサをかましてようやく作業できるようになりましたし、バルブコッタへのアクセスは手探り・磁石頼りですからねぇ。 タペット調整はインナーシム式なので、部品手配の前にこのヘッド部分はやっておかなきゃならないのも難点です。 もっとも、これまた設計が良いのかタペットクリアランスは規定値から外れてはいませんでした。 バルブシートやバルブも磨耗が少ないようです。
クランクベアリングなどは圧入するんですが、これまたちょっと工夫してCRC5-56とトーチ、トンカチでやっつけます。 ベアリングはたいした事はありませんが、やっぱりタイミングギヤの圧入は難しいですねぇ。 事前にちゃんと寸法を測っておいて、圧入代をちゃんと把握しておくのは勿論ですし、合わせ位置にも気を使います。 どうしても手作業の圧入だとズレ易いですからねぇ。(プレス機で圧しても、ズレる時はズレますけど) で、出来上がったら組み立てです〜〜〜〜〜@ 分解とは逆の手順ってのが基本ですけど、まずエンジン単体の状態でオイルを最初に入れてエンジンを逆さまにしたりすれば各部に行き渡りますねぇ。 冷却水はもちょっと後で、車体に載せてから入れた方が良いんです。 ちなみに、ズーマー系のスクーターは「モジュール構造」を採用していて、エンジンとドライブベルトケース部分は完全に分離できます。 つまり本当にエンジンだけの固まりとなるので、ちょっと感動してしまいますねぇ。 この単体状態でもキャブとマフラーが付いていればエンジンは動作できますから、汎用エンジンとしても使えそうです。 なんか井戸ポンプのエンジンみたいです。 で元通り車体に載せて組み立てて、エンジン始動チェックです。 どちらのエンジンも「ブルブル〜ン!」と軽快に廻ってます。 かなり作業は面倒でしたけれど、やっぱり腰上もメンテして良かったですねぇ。 でも、あんまり割に合わない修理ですねぇコレ。 ちなみに、クランクシャフト交換しての修理だと約5万円コースです。 (エンジン部のみ。バッテリーなど含まず) 今回のような荒ワザで、圧入ギヤの抜き差しで済ませてもその分技術料が加わるのでたいして安くなりませんねぇ。 まぁ腰上など余分なトコまで触らなければ、多少の費用節約は出来るでしょうけれど。 とにかく、ズーマー系のエンジン修理はこの位掛かると思って下さいね。 やってて気になったのは、「ガチャガチャ音」の方のエンジンは、内部が茶色いヤニ状物質でコーティングされたようになってました。 これは多分、オイルの品質の問題ではないかと思います。 いくら安い鉱物油を使ってもこうはなりません。 鉱物油の汚れは、大抵が墨汁でコーティングしたように真っ黒になります。 激安オイルの場合、添加剤成分(極圧減摩剤)からこんな状態になるコトがあるようなので、多分その手のオイルを使い続けてたのではないかと。 もしかしたら4stスクーター用オイルの銘柄によって、同様の添加剤によりこうなるのかも知れませんねぇ。 とにかく走行距離が多いので、故障してしまったのは仕方ない部分はあると思います。 でも、もしかしてオイル代ケチって、激安品を使っていたのならばこれは良くないですよん。 2サイクルのスクーターにも言えますが、安いオイルにしての節約効果はたかが知れているのです。 例えばこのズーマー系だと通常3,000kmごとにオイル交換をしますねぇ。 すると、2万kmまでには6〜7回のオイル交換をする計算となります。 1回のオイル量は0.6Lですから、約4Lのオイルを使うんです。 もし安いオイルをケチって使ったとして、果たして5万円コースの修理に相当する金額をオイル代だけで浮かせるコトは可能でしょうか。 計算上では到底不可能です。 むしろ、ちょっと高いオイルを入れて、少しでも寿命を長く使った方が本当の節約になるのではないでしょうか。 もっとも、この系統のエンジンに関してはいくらオイル管理に問題がなくても、壊れる時は壊れるようですが・・・・。 最近、クルマ業界もタイヤもやたら「エコ」を前面に押し出しています。 しかしちょっと間違っているのではないかと思うコトが多いんです。 燃費燃費と言いますが、じゃあガソリン代だけが安くなれば良いのかというコトですねぇ。 ガソリン代以外の出費が多くなるのも、私は絶対にイヤです。 その為により高価なクルマに買い換えろとか、ナンセンスです。 タイヤにしても、まず第一は安全性能を重視すべきで、エコ関連はそのオマケならば良いです。 しかし現実はグリップ性能やハンドリングを犠牲にしてまで転がり抵抗低減だけ追及した製品を売っていたり滅茶苦茶ですからねぇ。 4サイクルスクーターというレイアウトは、どうしても熱がこもりやすく、また少量のオイルでの潤滑を強いられます。 なのでオイル管理はしっかりと行い、使用するオイルは純正指定か同等以上のに限ります。 メカニズムに疎い人だと、「たかが原付きなのに勿体無い」とか平気で言いますけどそれは間違いですよん。 確かに走りは大人しいかも知れませんが、メカニズムの高度さはかなりのモノがあるのです。 しかも排気量が小さいと、ちょっと不調になっただけで影響がとても大きいですからねぇ。
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