●2011年08月07日(日)
ちょっと追加ネタがあります〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜@ 郵政カブMD50のピストンリングなのですが、普通仕様カブとはちょっと異なります。 よーく見なければ判んない部分なのですけどね。 トップリングだけなのですが、普通のカブは単純な四角い断面形状なんだけれど、MD50の方はバルブフェース/インサイドベベル型ってのになってんです。
バルブフェース型ってのは、リング外周側が緩やかなカーブを描く曲面形状ですねぇ。 これはトップリングに採用される形状タイプなのです。 角が落としてあるんだけれど、このおかげでシリンダ壁との摩擦を抑えつつ密閉性が良く、そして馴染みが優れています。 実はこの形状ってのは、単純形状(プレーン型といいます)のピストンリングでも慣らし運転が進んで馴染むと角が取れてこのような感じへ自然となるのです。 MD50への採用目的は、慣らし運転期間の短縮だと思われますねぇ。 やはり忙しく働くマシーンとしては、直ぐにでも全開全速力で動かしたいですし。 「郵貯だから悠長な慣らし運転なんかやってられない」なんて洒落を言いたくなっちまいますv
もう一つの、インサイドベベル型ってのは内周・上側の形状タイプです。 斜めに角が大きく落としてあり、基本的に五角形になってんですな。 これはトップリングとセカンドリングに採用される形状タイプです。 この目的ってのは、リングが収縮した時微妙にお猪口のように上側へ反り返る感じになるのです。 すると上方から加わる圧力に対しての密閉性が優れるようになりますねぇ。 密閉性を高める工夫ってのは、簡単に考えればリング張力を強くする方法があります。 またはリングの厚みを増やしてあげる方法もありますねぇ。 しかし、これらの方法ではシリンダ壁との摩擦も大きくなっちゃいます。 「摩擦は少なく、密閉性は高く」なんて矛盾するような要望をかなえる為の工夫がこのインサイドベベル形状なんです。 密閉性だけではなくって、シリンダ壁に付着した油膜を掻き落とす能力にも優れてんですけどね。 これの親戚として、「L型断面」のタイプもあります。 斜めカットではなくって、完全にL字型の複雑な断面形状なんですねぇ。 これはスプリントレース仕様のレースエンジンなんかに採用される事があります。 MD50への採用目的は、オイル消費の低減でしょうねぇ。 過酷な使用状況に晒される車両ですから、耐久性を向上させるには燃焼室内へ侵入するオイルを抑制しなければなりません。 4サイクルエンジンでも、エンジンオイルは僅かな量ですが燃焼室内で一緒に燃えてなくなります。 しかしその量が多くなれば、煤となって汚れが付着・堆積して行くのです。 メンテナンスサイクルを延ばすには、やはりオイル消費抑制は重要課題です。
つまりとても高級なピストンリングなんですねぇ。 ちなみに、プレーン形状のリングよりも加工コストが余計に掛かっているはずなのですが、なぜか補修部品のお値段はそんなに違いがありません。 なんででしょうかねぇ。 ピストンリングってのは、技術ノウハウの塊みたいなモノなのです。 材質や加工、設計によってエンジンの性能や耐久性が全然違いますからねぇ。 怪しい支那製エンジンの性能がなかなか出ないのも、こういう部分からしてダメダメなのが原因だったりするのです。 ピストンリング断面形状なんてのはとても微妙なモノですので、写真での撮影はちょっと難しいです。 よーく見れば、インサイドベベルになっているのが辛うじて判別できるかな、と思いますねぇ。 そんな感じなので、流用作戦ってのはあんまりお薦めできません。 ピストン側のリング溝との収まり具合もまた、重要な設計ノウハウの一つなのです。 一応寸法的には、先回コラム記事に書いた通り 1.0:1.0:2.0mm(オイルリングは組立て式)のリング厚みなのですが。 肝心の情報を最後に書いときます。 MD50のピストンとピストンリング品番です〜〜〜@ (サークリップやピストンピンは普通の12vカブと一緒です) ピストン [13101-141-J20] 参考価格 \2,020- ピストンリングセット [13011-141-J21] 参考価格 \1,580- ピストンピン [13111-GB2-000] 参考価格 \400- ガスケットはキタコのセットとかを使う前提ですんで、サークリップは別に書かなくてもいいですねぇ。 旧カブや旧車モンキーちゃんの、純正オーバーホール/圧縮比アップ改造を考えてる方の参考になればと思います。 部品代のみで考えれば、腰上OH(ピストン交換)として7千円弱ほどで出来ますからねぇ。 もっとも、肝心要なヘッドのコンディションなんですけれど、それのメンテ内容はケースバイケースです。 古くなってくるとどうしてもこの部分がネックとなりやすいですし、修復にはお金も沢山掛かります。
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