●2010年09月20日(月)
さてさてさて。待望(?)のバイクパーツネタです。 久々の、社外改造部品ですよんv 先日、純正クランクシャフトをアップしましたけれど、それ絡みのパーツです。 ちなみに、クランクシャフト交換修理、という案件なんだけど・・・・ 実は、ピストン&シリンダーが破損してしまってます。 コンロッド大端B/Gがイカれ、破損した軸受けの鉄粉でピストンとシリンダーが抱き付きを起こして、 その後にスカート下部端が破損に至ったと思われますです。(赤矢印) こんな状態でも、がんばって動いていたんだけど、盛大にメカノイズが出ておりました。 シリンダースリーブは一部、溶けかかってましたねぇ。 原因は・・・ちょっと判んないですねぇ。 回し過ぎ?なのか、寿命なのか。 キタコlightボアアップ88cc仕様の、何時ものなんだけれど。 なので、次こそは耐久性を持たせたいと思って、モンキーSTDクランクにて修理します。
んで、シリンダー&ピストンも交換するのですが・・・ いわゆる「ボアアップキット」での交換なんですねぇ。 ピストンとシリンダー、それに腰上ガスケットセットも入ってて一式なのです。 つまり、あと必要なのが基本的に腰下クランクケースガスケット2枚のみ。 (基本オーバーホールだとオイルシール等も交換するんですけどね) この手の『お手軽ボアアップキット』なんですが、市場での評判はイマイチみたいですね。 実は、そのままポン付けしてもあまり性能向上は見られず、妙に大人しいフィールになっちまいます。 なので、カムシャフト交換は必須、さらに吸排気ポートの加工も必要になります。 その他細かいトコをチマチマと総合的に仕上げれば、実際かなり良い感じの性能とフィールになります。 競争するには非力だけど、一人でお出かけするには必要十分なパワーレベルですよん。
改造記事ってのはあんまり書きたくないんです。 どうしても読み手の想定レベル設定を低く考えると、初心者にもわかるようこと詳細まで説明しなければなりません。 しかし、あまりこまごまと説明してると全体像がしっかり伝わらなくなってしまいます。 さらにちょっとした表現のアヤで、他人の心情を害したりキズ付けたりして、思いがけないトラブルを引き起こしたりがあります。 そういうトコまで注意して・・・なんて考えると、どう書いていいのやら判んなくなります。 今出てきた「必要十分なパワーレベル」ってのは、具体的に速いのか遅いのか、どうなんだ? という真っ当な疑問が沸くと思いますけれど、正直どう答えて良いのやら、です。 個人的な感想なんてのもあまりに抽象的ですし、だからってパワー計測してその結果グラフと数値を掲載してもバッチリokにはなりません。 何かとの比較だと判りやすいかも知れませんが・・・・ もっとも、書き手側も読み手側も共に理解する努力ってのが文章でのコミニュケーションでは必要なのが大前提なので、 その前提から外れてる人のコトまでは考えなくても良いのかも知れません。
お話を、元に戻しますv エンジンパワーアップを目論む場合に、耐久性・信頼性の問題があります。 もちろん安全マージンを削って出力向上させてんですけれど、だからって「壊れても良い」ワケじゃないでしょう。 (目的によっては、本当に「たとえ壊れても良い」場合があったりもします) 商売として実行するんならば、私は「壊れては良くない」と思いますけどねぇ。 自家用としてでも、やはり壊れればまた出費を余儀なくされるんで、壊れて欲しくないんです。 なので、第一には「壊れない」耐久性のある仕様ってのを考えたいですな。
その2として、総合的な実用性能の要求です。 これは、つまり「まとまり」なんて言葉で表現されますねぇ。 例えば、燃料タンクの小さな車両には、多少なりとも省燃費を考えたエンジン仕様にしなければ使い物になりません。 過去に自家用のモノで、全くこの点を無視してパワー主体で作ったので、非常に使い勝手が悪く苦労した事があります。 ちょっと出かけようと思っても、足を伸ばすなんてコトが出来なくてツマンナイんですv しかし、「割り切り」がワクワクするような面白さに直結しますので、どの位のトコでバランスをとるかが難しいですな。
これらを考えると、純正に準じた仕様で作るのが最も近道だと思います。 エンジンパーツ流用でも良いですし、いっそのこと丸ごとエンジン換装してしまうのも良いですね。 カブ系だとカブ90がありますので、この腰上とクランクを流用してピストンをタイカブ100のにした仕様ってのがオススメです。 カブ90純正の85ccだとちょっとトルクが細いですから。 発熱増大のリスクはあるものの、タイカブの97ccだと巡航時のエンジン回転数が抑えられ省燃費にも貢献します。 ただし・・・ギヤ比の設定が許すならばです。(多少ハイギヤードに振らないと効果がない) それとシリンダ長が伸びるので、それにより発生する問題をクリヤしなければなりません。 昔の時代だと、純正72cc仕様ってのが持て囃されたコトがありました。 確かに耐久性の点で安心ですけど、ちょっとパワー的に物足りなさを感じるかも知れないですね。
他の方法では、改造範囲を少なくして、効率よく結果が得られるようにするんです。 もっともこれは工夫などが必要となりますので、ちょっと技術的には難しい部分がどうしても出てきます。 それと、出回っている改造パーツの中には使い物にならない位の、品質・設計のモノも混じっていますので、選定には気を使わなければなりませんね。
んで、写真のブツです〜〜〜〜〜〜〜@ ピストン&シリンダーは、ボアアップキットとして購入しております。 今回は初めて使ってみる、SHIFT-UPというメーカー製品です。 (過去、お客さんのご注文で部品の取り寄せだけはしたことがありますが) 品番[205088] 定価\15,750-。アルミシリンダ(鋳鉄スリーブ)の52φ・88ccピストンです。 ちょっぴりお値段が安いってのが良いですな。 それと、特筆すべき点は鍛造ピストンの採用です。 鍛造ピストンのメリットは沢山ありますけれど、果たしてこの製品がどの程度ソレを活かしているのかは判りませんけどね。 でも、何となく「ピストンがしっかり作ってある感じ」がするので、前々から気になっていましたし、機会があれば是非とも使ってみたいと思っとりました。 部品構成は、ピストン・シリンダー・ガスケツト類のセットです。
まずは、他のメーカーのとの比較ですv (1)キタコ製lightボアアップキット88cc[214-1016401] 定価\21,000- こちらは、従来最も良く使っている製品です。過去に一度モデルチェンジしてます。 部品構成は、ピストンとシリンダーとガスケットセット。 (2)タケガワ製sステージ88cc[01-05-502H] 定価\26,250- これはハイカムが付属しているのが特徴です。値段の差はそのおかげです。 いくつか使用してみた実績がありますが、お奨めできます。 (3)デイトナ・ノーマルヘッド対応ビッグボアキット[72925(88cc)/72926(85cc)] 定価\12,075- 新発売で、とにかく安い!それと耐久性で有利な1mm小さい51φ版もあるのが良いです。 ただし設計レベルが低いメーカーなので、それが改善されてるか否か不明ってのが気がかり。 部品構成はキタコ同様の、ピストンとアルミ製シリンダー、ガスケット。 (4)ビームーンファクトリー製88ccボアアップキット 定価\14,490- 台湾メーカー製キットと形状は同じですが、実物を見た感じだとちょっと作りが良いみたいです。 ちなみにヤフオクなんかでは\8,000-位で似たような製品が出てたりします。
さらに番外篇として、鉄シリンダー製キットのもありますねぇ。 キタコ75cc、タケガワ80ccなんかは、私も良く採用した覚えがあります。 お値段が手頃なのに、部品精度や耐久性がとても良いんです。 ただし、今回はクランク交換修理のご依頼ってので、基本的には以前と同じ排気量にて修理しますのでパス。
タケガワ製のキットは、カムシャフトも一緒に購入する場合にはイチオシです。 厳密に比較すれば、キタコので改造した方がいろいろやって行くと結果的にパワー&スピードが得られやすいです。 けれど、その反面改造範囲が狭い場合にはむしろバランス的に優秀ですので、大人しい仕様で限定するならこちらですね。 もっともその差は微々たるもので、ほぼ無いと言っても差し支えなさそうです。 ちなみに、ハイカムはキタコ製[300-1083100]が\7,560-しますので、合計した金額だとタケガワの方が\2,310-も安かったりしますよんv 今回は補修用ってのでカムはそのまま使いますから、パスですな。 デイトナ製のキットは、多分もっともお買い得ではないかと思います。 アルミシリンダー/88ccキットでこのお値段ってのは、正直言うとヤフオクで出回ってるモノ以外で最安値じゃないかと。 但し私としては、初期の頃の同社製75ccキットの現物を見て、このメーカーの設計技術レベルは話にならないほど低くて信用できておりません。 そのような経緯があるので、エンジン部品に関してはあんまり使いたくないってのが本心です。 ただ、時にはびっくりするようなアイディア製品があったりしますので、メーカー全否定してるワケではないんです。 なので、恐る恐るですけれど、時にはここの製品をちょっと試してみたりとかはしてます。(大抵、なんらかのトラブルが発生しますが) いくら何でもそろそろ改善されているだろうとは思いますけれど・・・・まぁ他のメーカーもあるので、デイトナさんにこだわる必要性はないですねぇ。 でも低価格は魅力です・・・・これにしようか、どうしようかかなり迷いましたねぇ。
ビームーン製その他は実績不明なのですけど、あからさまに安モノなので採用するつもりはありません。 アドバンスプロってメーカーのもありましたけれど、アレは精度的に酷いモノでした。 予算的にどうしても厳しい場合は仕方ないですけれど、それには結果性能をも諦めるのがセット条件です。 確かに50ccと比較してパワーアップするのを楽しむ、それだけなら良いでしょうけれど・・・
で、シフトアップ製です。 アイディア豊富で色んなパーツをラインナップしてくれてますねぇ。 作りとしてはあんまり問題になりそうな部分は、見当たりません。 台湾メーカー製と同じと見てましたけれど、どうやらキタコ等と肩を並べる程かも知れないと思い直してます。 鍛造ピストン採用ってのが、今回のチャームポイントなんですよねぇ。 実際に使用した方の感想だと、パワーが出てとても好感触だったとのことです。 ですから、今回の結果がとても楽しみです。 お値段がちょっと安いってのも良いですねぇ。(但し仕切りが高くて儲けは少ない・・・店としては美味しくないです)
現物のチェックですが、精度はかなり良好です。 ピストンの形状も、なんかすごくコンパクトになってて良いですねぇ。 肉抜きとかしてないけれど、このコンパクトさのおかげで結構軽量になってます。 ピストンプロファイルに関しても、デイトナみたいなアホ設計なんかしてなくて安心しましたv ピストン/シリンダーのクリアランスは3/100mm位で、鍛造だからどうのってコトはないみたいです。 表面仕上げとかみても、コスワース製のを踏襲してるみたいでちょっとマニアックなつくりです。 追加工省略のためなのか、はたまた耐久性を鑑みたのか、ピンボス周辺に小細工はしてありません。 堅実な作りがされてますねぇ。 リングは、0.8-0.8-1.5の一般的な薄口仕様です。 シリンダー側も、良くある設計です。 オーバーサイズのスリーブを使い、スカート部分を削り込んでます。 金型の状態も良くて、バリなども最小限です。 ここはちょっと驚異的なんだけど、この内容のシリンダー単体で部品買いすると、わずか\6,300-なんですよ。 他メーカーのだと\15,000-とかしてたのに、びっくりです。 ちなみに・・・メッキシリンダだと単品買いで、\18,900-しますけどね。 (ヨシムラのキットはメッキシリンダ&鍛造ピストンの組み合わせなんです。但し\29,400-) もっとも補修部品の価格設定なんてのは、製造原価との関連が薄いのであくまで参考程度に。 でも、52φシリンダだけ欲しいな〜って人には\6,300-で買えるので、かなり良いですよん。 取り説に関しては、一枚の紙にびっしりって感じに作ってありますが、必要事項はキチンと網羅されてます。 詳細はサービスマニュアルを参照して下さい、になってますけれど、実作業はピストン交換ですからサービスマニュアルだけで用は済みますが。 これは先ほど書いたのとかぶりますが、読み手の想定レベルをどの辺に持ってくるかの問題ですねぇ。 注意点ってのは・・・あ、このキットのピストンには珍しく「向き」がありません。 取扱説明書にもちゃんと記述があります。 吸排気バルブのリセスもないし、ピストンピンもオフセットされてないんです。 で、気になる圧縮比は・・・11.30:1ですねぇ。 タケガワのは11.5:1とほぼ同等です。 ピストンピンは、軽量タイプではありません。 ガスケットの作りとか見ても、別段変わったトコがありませんね。よくある補修品レベルです。 高級感ってのが残念ながらピストン以外には見られないので、一般にはあまり評価がされにくいかも。 あとちょっとここをこうしたら・・・が何点かはありますけれど、オーソドックスにまとめてある製品ですね。逸品とまでは書けませんけれど、良い感触ですv
|